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蓮の魅力と写心について

蓮の魅力を語れば一冊の分厚い本が書けます。それほどに蓮に纏わる歴史や文献、

文学や芸術、更に謂れや比喩等は豊富にあります。また蓮を語る際、人間の生き方

や生活に直接的な影響を与え続けてきたものとしての仏教を外すことはできません。

蓮が仏教に採り挙げられた大きな理由は、その生い立ちや性質にあります。即ち、蓮

は汚れた泥の中より咲き出て清浄無垢な大輪の花を咲かせること、これを「汚泥不染」

といいます。更に、花と実が同時に成るということ、これは「因果倶時」といわれます。

この二つの比喩が蓮の最大の特質です。

これらのことが仏教の根本である真理(因果応報)や菩薩の実践行(理想の生き方)を

現す比喩として「妙法蓮華経」等の経典に採り入れられた最大の要因です。またこの

蓮は古代インドに於いて、仏教誕生以前にはバラモン教、それ以前の土着の民族に

あっても信仰の対象や神秘の象徴として崇められていたのです。

蓮はこのように古代より世界の各地で崇められ、愛でられ重用されてきましたが、特

に仏教に採り入れられてからは、インドをはじめチベットや南方、更に中国や朝鮮を経

て日本に渡来し、その仏教思想的な象徴としての蓮が定着しました。

ところが日本での蓮の受け入れられ方は、 必ずしも他の東洋や西洋でのそれとは異

なり、独自の思想的な認識が生まれました。即ち、極楽浄土の花として、また、現代で

は葬式の供養花としての位置付けが為されました。しかし、インドや中国等での蓮は菩

薩行や平和の象徴として、ことに中国では君子の交わりとして蓮の種子の交換が為さ

れたり、目出度い行事の時に用いられ、平和や愛の象徴として重用されてきたのです。

蓮はまた、上記とは別の観点から眺めても実に素晴らしいものです。この蓮の魅力は

単に姿形や色彩にあるのではなく、秘められた内容にあるのです。つまり、生命力の

素晴らしさや神秘的な魅力、それらが幻想的で量り知れないイメージの広がりや深さ

に結びついていくのです。

『何故、そんなに蓮が魅力的なのか?』

それは蓮自身が答えてくれます。蓮を撮り続けるうちに、私の心に蓮が語りかけてくる

のです。自然の不思議さや素晴らしさを気付かせてくれ、そして人間の正しい生き方

までをも教えてくれます。またこの蓮をモチーフにして、その蓮への想いを写すことは

自身の心の成長を写すことに他ならないと感じさせてくれ、写真から「写心」へと転換

させてくれたのも蓮なのです。

私は、その蓮自身が備えている崇高な精神や豊富なイメージを「写心」として表現し、

その作品を介して自身の心を省察し、更に新たな作品作りを目指してきました。

蓮と仏教から学ぶ人生、それは素晴らしい生き方となります。清浄で気高く高遠な精

神、枯れても尚美しく、素晴らしい生き生きとした老いを蓮の姿に学びながら、これか

らも蓮の「写心」に専念し、蓮のような素晴らしい人生を枯れてみたいと想っています。

これらのことが、私の蓮に対する想いであり、蓮から学んだ示唆であり、それが蓮の

魅力のすべてなのです。

まだまだ若輩で未熟な身ですが、古代の人々が蓮を愛し、蓮から学んだことを少しで

も「写心」を通して体験していきたいと思っています。
                                             ー守道―